風つかい
ひとりの 風つかいを知っている。
すそをひらめかす そよ風から、
稲妻きらめかす嵐まで
彼女は自在に風をあやつる。
風は、めぐる季節を告げしらせ、
記憶と予感をはこぶ。
わすれたはずの 古い日々、
まだ見ぬはずの 新しい日々。
ふたつの時に吹く風を、
彼女は 今ここに、呼びあつめる。
それぞれの温度と匂いをたもったまま、
風たちは、上昇気流にのった。
渦ができ、しだいに竜巻がまきおこる。
その竜巻の名は < futatsukukuri > 。
futatsukukuri を身にまとうと、
私の奥にひそんでいた風が、呼応する。
内から外へ、あざやかに道を見つけて、吹き渡る。
風にみちびかれ、私は進む。
このからだで、行けるかぎり行こうと思える。
風つかいの彼女と出会うまで、
ぜんぜん知らなかった。
洋服に、そんな魔法があるなんて。
織田りねん Linen Orita