風つかい

ひとりの 風つかいを知っている。
すそをひらめかす そよ風から、
稲妻きらめかす嵐まで
彼女は自在に風をあやつる。
風は、めぐる季節を告げしらせ、
記憶と予感をはこぶ。
わすれたはずの 古い日々、
まだ見ぬはずの 新しい日々。
ふたつの時に吹く風を、
彼女は 今ここに、呼びあつめる。
それぞれの温度と匂いをたもったまま、
風たちは、上昇気流にのった。
渦ができ、しだいに竜巻がまきおこる。
その竜巻の名は  < futatsukukuri > 。
futatsukukuri を身にまとうと、
私の奥にひそんでいた風が、呼応する。
内から外へ、あざやかに道を見つけて、吹き渡る。
このからだで、行けるかぎり行こうと思える。
風にみちびかれ、私は進む。
風つかいの彼女と出会うまで、
ぜんぜん知らなかった。
洋服に、そんな魔法があるなんて。

作家。1982年大阪府生まれ。

ロンドン芸術大学カンバーウェル校 グラフィックデザイン科 卒業。

小説に『ゆきあかり』(講談社 村田りねん名義)、絵本に『ポンチ』『ぐらぐらたん』『ママ、どっちがすき?』(パイ インターナショナル)。