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十周年に寄せて

十年前、右も左もわからないままブランドを立ち上げました。

六畳一間の部屋を借りて

「B級ファッションを真面目に追求している昭和の忘れ形見的ファッションブランド」

とコンセプトを掲げてすぐに変更、

「記憶や憧れにデザインを加えて新しい価値を生み出すこと」

をコンセプトにコレクションを発表してきました。

当時はアンチハイファッション志向、自分にしか出来ないことを求め、

自分の歴史を辿るに至って記憶と妄想のふわふわしたデザインをしていたように思います。
気取ることが恥ずかしく、とにかく身の丈にあった物や事に拘りました。
朝から晩までアトリエに篭り、とても地味だけど ミシンがあればそれでいい

的な日々を過ごしていました。

そうこうするうちに結婚が決まり、子供を産んで全く新しい生活がスタート。
私は日々の、悔しくてやりきれない気持ちを糧に作業に勤しんでいたので
心のどこかで「結婚、子供、幸せ」が来ることを恐れていたのです。

このとき初めて、記憶のベールから外れ「今の自分」に目覚めて

エッセイのような服作りが始まりました。
暮らしをヒントに、、なんていう生ぬるいものではありません。
結婚しても子供を産んでもやっぱり沸々と湧き上がってくる何かがあるのです。

なんだろう、この沸々は。

私はこれをブルースと呼んでいます。
ブルースがある限り私は服を作っていられる気がしています。

今回初めて記念冊子を作りました。
出来上がったものを見たとき、
それまでずぅっと忘れていた当初のコンセプトを思い出したのです。
自分の中に持っているものってそう簡単には変わらない、ということに気付いて

なぜだか妙に腑に落ちたのでした。

そんな私の右往左往な十年間に関わっていただいた皆様に感謝します。


 


FUTATSUKUKURI 香衣

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